中川先生の「ためになる話」

これからの医療者

 これまでの医学知識が通じない事態が、どんどん増えて来ている今日、これから医療者になろうとしている若い人々にどんなメッセージが送れるのか考えてみようと思います。
 まずは感染症から。これまで人類は厳しい感染症との戦いで勝ってきたとは、いうけれど、これまでの常識が通じにくい新型コロナウイルスに対して専門家と称する人々の意見の統一感がないし、予想もことごとく外れます。何故かというと、このウイルスは既存のコロナウイルスとはいえ、変異あるいは進化していて、感染症専門家のこれまでの知識が効果的に働いていません。だからといって専門家の意見を聞くなと言うのではありません。専門家の意見の統一がない時は、統一されている部分については従うのがいいのですが、極端な意見については保留。そして健全な常識を磨くことが大事です。
 またITの進歩で、医学の勉強も大幅に変わります。これまでは無闇に暗記、暗記を強いられましたが、大枠を学んだら、情報の検索をいかに早く、正確に、そして信頼性のあるもの引き出すかが、臨床では大事になります。
 最近では、一般の人々もいろんな医学知識に簡単にアクセス出来る時代ですが、偏った、不正確な情報を、錦の御旗のように医療者の前にかざして、この薬をくださいと指定してくるような患者さんも増えています。その時に大事なのは、言下に否定するのではなく、何故その患者さんが、その薬が効くと信じたのかを、きちんと聞き取ってから、こちらの言い分を分かりやすく説明することが大事です。このへんまでくるとカウンセリングのように聞こえるかもしれませんね。でも、これからの医療者は様々な情報に接する機会の多い患者さんの病(やまい)の物語を聞き取ることで、より効果的な治療が出来ます。
 つまりこれからの医療者は健全な常識を持ち、最新の医学情報に素早くアクセス出来、患者さんの病の物語をきちんと聞き取れるという能力が必要とされます。つまり、コンピューターリテラシーに長けていてなおかつコミュニケーションに秀でた医療者が医療を牽引していくと考えられます。
 暑い夏で、気持ちも萎えがちな季節だと思いますが、志を新たに頑張ってください。未来の医療は皆さんが作ってゆくのですから。

顧問医師:中川 晶
令和2年9月

中川晶先生プロフィール

中川晶先生プロフィール

 産経新聞の『中川晶の"生き方セラピー"』でご存知の方もおられると思います。
10年来お付き合いいただいている私共が言うのもなんですが、それはもう愉快な方で、一度語り始めると尽きることがないかのように実に幅広い、しかも有益で面白い話題が湧き出てくるのです。これはおそらく、一度や二度ではない挫折体験と、森羅万象に対する、特に人間に対するとてつもない興味がなせる技だと思えます。受験生についてもご自身の実体験と、臨床心理士としての深い洞察から、真の受験生の心の友となっていただけること請け合いです。先生のユニークで的を得たお話しを、お楽しみください。

  • なかがわ中之島クリニック院長
  • 奈良県立医科大学医学部卒業
  • 精神科専門医、臨床心理士
  • 大阪赤十字病院看護部講師
  • ナラティブコミュニケーション研究所所長
  • 京都看護大学大学院特任教授
  • 奈良学園大学保健医療学部客員教授
  • 京都大学医学部講師
  • 日本保健医療行動科学会会長
<著書・共著>
「心療内科のメルヘン・セラピー」(講談社)
「やすらぎが見つかる心理学」(PHP)
「心理療法」(朱鷺書房)
「ココロの健康からだの医学」(フォーラムA)父(故人)中川米造先生との共著 他

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