中川先生の「ためになる話」

今回は、人間とは切っても切れない「睡眠」の"ためになる"話です。

睡眠について

暑くて寝苦しい夏がやってきましたね。さて、今回の話題は睡眠です。

数年前から睡眠文化研究会というおかしな名前の研究会に誘われてメンバーになったのですが、これがなかなか面白い。メンバーは10名ほどで、みな専門は違ってます。 文化人類学者、社会学者、動物学者、脳生理学者などですが脳生理学者を除けば、睡眠とは直接関係のない学者ばかり。彼らによると眠りは文化と関係が深いらしい。例えばベッド。イギリスの博物館で昔の人のベッドが展示してあったが、あまりにも小さい。 こんな小さなベッドであのでかいイギリス人が眠れるはずがないと不思議だったけど、 彼らは身体を伸ばして寝たのではなくて、ほとんど座ったような姿勢で寝てたらしい。 つまり枕が異様に大きくて、ほとんどソファのクッションのよう。
今でもその名残りはあって、ホテルの枕は大きすぎてフワフワ過ぎで、眠りにくいったらありゃしない。眠る姿勢から文化によって違うとすれば、調べればいくらでも面白い結果が出そうでしょ。

さて、ぼくの研究会での立場は睡眠の臨床、つまりは不眠症について報告することです。睡眠はこころの病気とも関係が深くて、うつ病の場合7~8割は不眠症になるし、不安障害でも健康な人に比べると圧倒的に不眠を訴える人が多いんです。 病気と関係なくても、日本人の5人に一人は睡眠に問題があるという統計もあります。この文章を読んでる受験生の皆さんの中にもきっと不眠で困ってる人は多いんだろうなあ。

よく考えてみると「眠る」というのは変な言葉なんです。何故かというと、睡眠というのは、意識がない状態の一種でしょ。それで「眠る」というのは「意識的に、意識を失うことを意識すること」になりませんか?え、ややこしいってですか?要するに、意識して意識を失うこと なんて出来ないってこと。これが眠ろうとすればするほど目がさえてくるメカニズムなんです。
それじゃどうすればいいかというと、「眠ろう」から「眠ってもいい」に変えればいいだけなんです。ある心理療法家の治療法で「とてつもなく眠くなるまで目を開いていなさい」 というのがあります。また偽薬の実験で面白い結果があります。ただのメリケン粉を「睡眠薬」だと偽って不眠症の人にあげるとよく効くというのは知られてますが、案外知られてない実験を紹介します。やっぱりただのメリケン粉を不眠症の人にあげるところまでは先ほどと同じなの ですが、違うのはあげるときに「睡眠を悪くする薬」ですと言うのです。

それなら不眠症の人は余計眠れなくなると思うでしょ。ところが結果は、やはり普段より眠れた という報告が多いのです。理由は、不眠の人が「眠れないのは、この薬のせいであって自分の せいではない」と考えるので、ついグッスリ眠ってしまうのだそうです。

要するに、眠ろうとすれば眠れない、眠らないでおこうとすれば眠ってしまう。
人間って困った生き物です。ぼくも含めて・・・

顧問医師:中川 晶
平成22年 7月

中川晶先生プロフィール

中川晶先生プロフィール

 産経新聞の『中川晶の"生き方セラピー"』でご存知の方もおられると思います。
10年来お付き合いいただいている私共が言うのもなんですが、それはもう愉快な方で、一度語り始めると尽きることがないかのように実に幅広い、しかも有益で面白い話題が湧き出てくるのです。これはおそらく、一度や二度ではない挫折体験と、森羅万象に対する、特に人間に対するとてつもない興味がなせる技だと思えます。受験生についてもご自身の実体験と、臨床心理士としての深い洞察から、真の受験生の心の友となっていただけること請け合いです。先生のユニークで的を得たお話しを、お楽しみください。

  • 奈良学園大学保健医療学部教授
  • 大阪大学医学部講師
  • 心療内科医・臨床心理士
  • 京都大学講師
  • なかがわ中之島クリニック院長
  • 大阪医歯学院顧問医師
<著書・共著>
「心療内科のメルヘン・セラピー」(講談社)
「やすらぎが見つかる心理学」(PHP)
「心理療法」(朱鷺書房)
「ココロの健康からだの医学」(フォーラムA)父(故人)中川米造先生との共著 他

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