中川先生の「ためになる話」

早いもので、第5弾となりました。
今回は、タイトルから難しいと思うかもしれませんが、 前向きな気持ちになれる"ためになる"話です。

秋も深まり、哲学してみませんか?

あんなに暑かった夏も過ぎてすっかり秋の気配も深まってきましたね。さて、今回は柄にもなく哲学を語ってみようかと思います。 古代中国で生まれた哲学『荘子』です。あ、難しそうって今、思いませんでした?いえいえ、ぼくは哲学者じゃないし、ただの医者だ し、見当違いしているかもしれません。でもね、ぼくも昔は悩める美青年だったんです。美は余計か・・ま、その頃ぼくを助けてくれたのが『荘子』の本だったわけです。今回はそのお裾分けをしてみようかと思います。

  荘子の世界は、逆説で満ちています。現実とか夢というけど、どちらが夢でどちらが現実かは誰も証明出来ないとか、善と悪は立場で変わるとか、とにかく常識が常識でなくなるのが小気味良いんです。そして第一章から度肝を抜かれるスケールの大きな話が始まります。ざっと紹介してみるとこんな感じ。世界の果ての北の暗い深海にとてつもなく大きな魚が住んでおりました。この魚の大きさたるや尋常ではなく、その巨体は幾千里あるとも知れず、と始まります。この巨大な魚が、やがて転身の時が来て深海からまっすぐ海面を目指します。そして海面で渾身の力を奮って飛び立つと、魚は巨大な鳥に変身し、何万里の高さまでひとっ飛びで上昇します。そんなことしたら、大気圏外に出てしまうなんて、野暮なことは言わない・・。これは物語なんです。次は九万里の遥か天空の極み、巨大鳥の視点から地上を眺めます。すると日々の悩みなんて本当に小さな悩みになってしまいます。だって九万里の高さから見たら全ては蒼一色で、ほとんど全てのことは大したことではないのです。言われてみれば、そうかもしれません。悠久の宇宙の営みからすれば、受験の悩みなんて消し飛んでしまうのではないでしょうか。

 次の章は、小さな雀や野鳩たちのつぶやきです「あの馬鹿デカい鳥ときたらどうだ。何の必要があって九万里もの高さまで飛ぶ必要があるのだ」と冷笑します。荘子は雀や野鳩を卑小な俗世間にたとえているのかもしれません。細かいことにばかり気を配り、大きな 志を持つ者を嘲笑うのが俗世間ならば、そんなものには目もくれず高き極みを悠々と飛ぶ巨大鳥からすれば、雀や野鳩のつぶやきなんか何の意味も持ちません。荘子は少し不器用なぼくらを励ましてくれているのかもしれません。つまりは誰でも巨大鳥の視点を持つことが出来ると荘子はいいます。

 確かに我々の命なんてたかだか百年もてばいい方だし、それでも宇宙的規模からみたら一瞬にも満たない時間なのかもしれません。 しかも、生まれつき頭のいい奴がいたり、やたら運のいい奴が居たりで不公平ったらありゃしない。いうならば我々はどうあがいても逃れられない檻のなかに産み落とされてしまっているのです。でも、そんなこととは関わりなく、或いは「にもかかわらず」その檻のなかで一舞いしてみせるしかないではないかと、荘子は言います。さて、今回は高い志を持って飛び続ける我が受験生の皆さんへのエールになったでしょうか?

顧問医師:中川 晶
平成21年10月

中川晶先生プロフィール

中川晶先生プロフィール

 産経新聞の『中川晶の"生き方セラピー"』でご存知の方もおられると思います。
10年来お付き合いいただいている私共が言うのもなんですが、それはもう愉快な方で、一度語り始めると尽きることがないかのように実に幅広い、しかも有益で面白い話題が湧き出てくるのです。これはおそらく、一度や二度ではない挫折体験と、森羅万象に対する、特に人間に対するとてつもない興味がなせる技だと思えます。受験生についてもご自身の実体験と、臨床心理士としての深い洞察から、真の受験生の心の友となっていただけること請け合いです。先生のユニークで的を得たお話しを、お楽しみください。

  • 奈良学園大学保健医療学部教授
  • 大阪大学医学部講師
  • 心療内科医・臨床心理士
  • 京都大学講師
  • なかがわ中之島クリニック院長
  • 大阪医歯学院顧問医師
<著書・共著>
「心療内科のメルヘン・セラピー」(講談社)
「やすらぎが見つかる心理学」(PHP)
「心理療法」(朱鷺書房)
「ココロの健康からだの医学」(フォーラムA)父(故人)中川米造先生との共著 他

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