中川先生の「ためになる話」

第3回目は、「新型インフルエンザ」ではなく「新型うつ病」について!!
うつ病は最近よく聞く「病い」の一つです。中川先生の話を聞いてご用心を。

「新型うつ病」にご用心!

 さて、今回の話題はうつ病です。この病気は 近年とみに有名になってしまったようです。ここ10年間ずっと自殺者が 3万人を越えていますが、 その原因としてうつ病が大きく取り上げられていますし、休職者の増加についても、 真っ先に原因としてうつ病が挙げられます。
本当にそうなのかどうかは意見の分かれるところですが、確かにうつ病は増加しているようです。 ただ、専門家の間ではうつ病の形が変形してきたというか、あまり典型的いでないうつ病、つまりは新型のうつ 病が顕著に増えているという意見が多いようです。うつ病はウイルスが原因ではないのだから、 インフルエンザみたいに新型って変な言い方ですが、どうもこれまでのうつ病と様子が違うんです。
どこが違うかというと、まずうつ病のくせに気分反応性が認められる。 つまり、これまでのうつ病はイメージとして生真面目で自責感が強いというのが通り相場だったのですが、新型うつ病の場合、 自分にとって都合の良い事態が起こると、楽しんでしまいます。例えば、ふだんは引き籠って沈み込んでるくせに、 好きなタイガースの試合になると、甲子園で人が変ったように大声で声援を送ったり、 体がだるいだるいと言ってるくせにサザンのカウントダウンコンサートでは はしゃぎ回ります。 まことに身勝手なうつ病ですが、一応うつ病の診断基準を満 たしているのです。
うつ病の診断基準は、まず抑うつ気分や興味、喜びの喪失が2週間以上続いていること。(このうち一つは必須) それ以外に以下のような項目がチェックされます。食事療法をしていないのに、著しい体重減少、あるいは体重増加、 ほとんど毎日の不眠または睡眠過多、焦燥感、易疲労性、または気力の減退、自分の無価値観、または過剰であるか不適切な罪責感、 思考力や集中力の減退、または決断困難、反復的な自殺への誘惑。つまりはこれらの症状のうち5つそろえばうつ病と診断できます。 だから先ほどの身勝手なうつ病もうつ病のうちということになります。
ただし、 いくらなんでも、それだけ で新型うつ病というのはいい加減過ぎます。
実は、このうつ病は正式には非定型うつ病という名前があって、ある薬物に対する効果が 高いため、普通のうつ病とは違う神経メカニズムのあるうつ病ではないかということで、1959年に命名されています。 このうつ病の診断は先ほどから書いてる気分反応性(これは必須)に以下の症状のうちの2つ以上あれば、非定型うつ病といいます。 食欲または体重増加、過眠、鉛(なまり)様麻痺、長期にわたる対人拒絶感受性を有する。鉛様麻痺というのは言葉どおり、 体が鉛のように重だるいこと、対人拒絶感受性とは変な言葉ですが、要するに他人の言葉に傷つきやすく脆いという意味です。 ここまで言われても、納得いかないでしょうね。
要するに傷つきやすく、いったん傷つくと復帰しにくくて、うつ状態になってしまうんです。 これはやっぱり「わがまま病」ですかねえ。これは早く治療すれば治りやすいのですが、遅れると治りにくいのでご用心!

顧問医師:中川 晶
平成21年8月

中川晶先生プロフィール

中川晶先生プロフィール

 産経新聞の『中川晶の"生き方セラピー"』でご存知の方もおられると思います。
10年来お付き合いいただいている私共が言うのもなんですが、それはもう愉快な方で、一度語り始めると尽きることがないかのように実に幅広い、しかも有益で面白い話題が湧き出てくるのです。これはおそらく、一度や二度ではない挫折体験と、森羅万象に対する、特に人間に対するとてつもない興味がなせる技だと思えます。受験生についてもご自身の実体験と、臨床心理士としての深い洞察から、真の受験生の心の友となっていただけること請け合いです。先生のユニークで的を得たお話しを、お楽しみください。

  • 奈良学園大学保健医療学部教授
  • 大阪大学医学部講師
  • 心療内科医・臨床心理士
  • 京都大学講師
  • なかがわ中之島クリニック院長
  • 大阪医歯学院顧問医師
<著書・共著>
「心療内科のメルヘン・セラピー」(講談社)
「やすらぎが見つかる心理学」(PHP)
「心理療法」(朱鷺書房)
「ココロの健康からだの医学」(フォーラムA)父(故人)中川米造先生との共著 他

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