中川先生の「ためになる話」

夏の乗り切りかた

夏の乗り切りかた とにかく毎日暑い日が続いていますが、皆さんは体調いかがでしょうか?この時期はエアコンの効いた部屋と外の温度差が大きいので、体調を崩す人が多いようです。水分補給、生活リズムにも気を配ってこの時期を乗り越えましょう。
 さて、世間では夏休みだと若者はバカンスを謳歌していますが、それを横目に勉強に精出すのは、きついかもしれませんね。しかし発想を変えることで感覚は変わります。例えば美味しいものを食べたければ、空腹にしておくことが何よりも重要です。何日も絶食をした後のお粥の一杯は信じられないくらい美味しいものです。同じことが受験勉強にも言えます。この時期苦しい思いをしながら精進したことは来年の合格の喜びを何倍にもするでしょう。記憶力が尋常でない受験生もいて、あまり苦しい思いをせずに難関大学に合格する人もいます。しかし、その人たちの合格の喜びは、それほどでもなさそうです。
 もう一つは努力する癖が付いているかどうかというのが、その後の道で大きく変わってきます。昔、僕の友人の整形外科医に聞いた話ですが、彼はどちらかというと不器用だったそうです。器用な外科医はそれほど苦労もなく難しい手術を軽々とこなすのだそうですが、彼は自分が不器用なので、器用な連中の2倍、3倍練習を重ねたそうです。その結果、途中から彼のほうが手術の腕が上になったそうです。今では彼はある領域の手術では世界的権威になっています。

 最近、面白い本を読みました。かなり分厚い本(800頁あります)なので合格してから読むといいです。題名は「ルシファーエフェクト」といいます。ルシファーというのは悪魔の親玉です。エフェクトは「効果」でしょうか?つまり「悪魔効果」という題名です。著者はジンバルドーという元スタンフォード大学の社会心理学者です。ジンバルドーは45年前にスタンフォード大学で重要な実験を行いました。20人ほどの学生ボランティアを使い、大学にこしらえた模擬刑務所に学生を無作為に看守役と囚人役に分けて、二週間暮らしてもらうという実験でした。
 ところが、途中から学生たちの様子がおかしくなり、わずか4日で実験を打ち切らねばなりませんでした。状況としては、看守役がひどく横暴になり囚人役を精神的、身体的苛めで追いつめてしまったからでした。どちらの学生も単なる実験、単なる設定だと分かっているのに実験を中止しなければならなかった事はジンバルドーにとっても不可解でした。その後、この実験は世界的に有名になり映画(『エス』というタイトル)にもなりましたが、ジンバルドー自身は沈黙していました。
 2004年、イラクの米軍刑務所アブグレイブ刑務所で米軍看守によるイラク人囚人に対する拷問をはじめとする究極の残酷さが暴れ、ついにジンバルドーは45年間の沈黙を破ってこの本を書きました。人間がどこまで残酷になるものか、そしてそれは本人の性格というより、その人の周囲に形成された雰囲気、状況によることをスタンフォードの実験データ、アブグレイブ刑務所の報告書など様々なデータを駆使して証明しようとしています。

 場の雰囲気に人間というものはいかに流されやすいかが、よく描かれています。これは残酷さだけではなく、あらゆる事柄に及びます。いつも自分を外側から見る癖をつけて、流されないことが大事です。

顧問医師:中川 晶
平成28年8月

中川晶先生プロフィール

中川晶先生プロフィール

 産経新聞の『中川晶の"生き方セラピー"』でご存知の方もおられると思います。
10年来お付き合いいただいている私共が言うのもなんですが、それはもう愉快な方で、一度語り始めると尽きることがないかのように実に幅広い、しかも有益で面白い話題が湧き出てくるのです。これはおそらく、一度や二度ではない挫折体験と、森羅万象に対する、特に人間に対するとてつもない興味がなせる技だと思えます。受験生についてもご自身の実体験と、臨床心理士としての深い洞察から、真の受験生の心の友となっていただけること請け合いです。先生のユニークで的を得たお話しを、お楽しみください。

  • 奈良学園大学保健医療学部教授
  • 大阪大学医学部講師
  • 心療内科医・臨床心理士
  • 京都大学講師
  • なかがわ中之島クリニック院長
  • 大阪医歯学院顧問医師
<著書・共著>
「心療内科のメルヘン・セラピー」(講談社)
「やすらぎが見つかる心理学」(PHP)
「心理療法」(朱鷺書房)
「ココロの健康からだの医学」(フォーラムA)父(故人)中川米造先生との共著 他

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