中川先生の「ためになる話」

不安を消しさる方法

 夏も終わり、皆さんもますます受験勉強に力が入っていることと思います。
でも、少し不安も強くなってるかもしれませんね。多くの先輩がこの時期を経験してきました。ぼくもその一人ですけどね。

 さて、今日は不安の乗り越え方について少し書いてみましょう。まずは自分だけでないと知ること。皆が不安なのです。
不安を抑えこもうとすると余計不安が増すものです。不安でいいと開き直ることが肝要です。自分はやるべきことを淡々と続けて行くというのがいいようです。
不安に飲み込まれるのは不安に意識を向けるからです。確かに受験勉強は単調で、成績ごときで一喜一憂して不安が高じやすいものです。
たかが試験の成績です。そんなものに振り回されるのは不快なものです。でも皆さんは来年の栄冠のために雌伏すると決めたのです。
不安が起ころうが、成績がどうあろうが、淡々と続けましょう。来年不合格だったらどうしようと不安になるのですね、いいではありませんか!
出来ることを、精いっぱいやっていけばいいのです。

 あなたはただ淡々と自分のやるべきことをこなしていきましょう。未来の不安も、過去の後悔も現実ではなくあなたの心が作り出した幻に過ぎません。
「今、ここ」しか現実はありません。「今、ここ」に意識をいつも集中することが大事です。

 レクトシャッフェンという人が面白い寓話を紹介しています。
昔、禅宗のお坊さんが旅をしていたそうです。後ろに気配を感じたので振り返ると何と虎が自分を追ってきているではありませんか!
お坊さんは慌てて走りだしたのはいいのですが、方向を、間違えて崖の方角に走ってしまいました。崖っぷちに追い詰められたお坊さんは、ふと思いつきました。
虎は崖を登れても、降りることが出来ません。それでお坊さんは気をつけながら崖をそろそろと降りていきました。上を見上げると虎が恨めしそうに睨んでますが、降りては来れないようです。
やっと胸をなでおろし、ふと下を見ると別の虎が自分をねらって崖をよじ登ってくるではありませんか!万事休すです。

 お坊さんは身動きすることも出来ずふと前を見ました。すると岩の割れ目から野いちごがたわわに実っているのが目に入ったそうです。
お坊さんはその野いちごがたいそう美味しそうに見えたそうです。それで野いちごを口に入れると何ともいえない美味しさが口の中いっぱい広がり、さらには時間まで広がり、時間が永遠になったそうです。おしまい。

 え?なんの話かですって?

 つまり崖の上にいる虎とは過去の後悔。逃げる時方向を間違わなければという後悔。また崖を登ってくる虎は未来の不安を表しています。
食べられてしまう。でもね、過去はすでに終わってるし、未来はまだない。つまりあるのは現在だけ「今、ここ」だけなんです。

 お坊さんにとって現在とは野いちごなんです。そして「今ここで」に意識を集中することで後悔や不安は消え失せてしまうという意味の禅問答のような寓話です。
皆さんにすれば崖の上の虎は過去の不合格になった経験、登ってくる虎は来年も不合格になるのではないかという不安です。
あなたにとって野いちごは、目の前の教材です。その教材に意識を向けることが不安を消し去る一番の方法です。
グッド・ラック。

顧問医師:中川 晶
平成27年9月

中川晶先生プロフィール

中川晶先生プロフィール

 産経新聞の『中川晶の"生き方セラピー"』でご存知の方もおられると思います。
10年来お付き合いいただいている私共が言うのもなんですが、それはもう愉快な方で、一度語り始めると尽きることがないかのように実に幅広い、しかも有益で面白い話題が湧き出てくるのです。これはおそらく、一度や二度ではない挫折体験と、森羅万象に対する、特に人間に対するとてつもない興味がなせる技だと思えます。受験生についてもご自身の実体験と、臨床心理士としての深い洞察から、真の受験生の心の友となっていただけること請け合いです。先生のユニークで的を得たお話しを、お楽しみください。

  • 奈良学園大学保健医療学部教授
  • 大阪大学医学部講師
  • 心療内科医・臨床心理士
  • 京都大学講師
  • なかがわ中之島クリニック院長
  • 大阪医歯学院顧問医師
<著書・共著>
「心療内科のメルヘン・セラピー」(講談社)
「やすらぎが見つかる心理学」(PHP)
「心理療法」(朱鷺書房)
「ココロの健康からだの医学」(フォーラムA)父(故人)中川米造先生との共著 他

ページトップに戻る