中川先生の「ためになる話」

本番で力を発揮するコツ

本番で力を発揮するコツ その昔、ぼくも予備校に通っておりました。もう後がない状況で、国公立医学部クラスという、その予備校では最難関クラスに後期から入学しました。クラスは静かで誰一人私語もなく、皆がマシーンのごとく淡々と授業を受け模擬試験に挑んでおりました。ぼくもその一人ではあったのですが、先にも書いたように、実はもう崖っぷちで後のない状況でしたから、心穏やかなはずはありません。成績は思うように伸びないのに本番は近づいてイライラ、クヨクヨ、ドキドキの毎日でした。

 模擬試験ではどんなに頑張ってもある男に勝てませんでした。いつも模擬試験の結果の張り出しを見るとぼくの前にその男の名前があります。とうとう最後にはクラスで2番まで頑張ったのですが、その男はその回は1番でした。結局、最後まで、彼に遅れを取りました。

 そして本番の日、ぼくは斜め前の席にその男が座っているのを発見してゾッとしました。ぼくが落ちて彼が合格するという恐怖に一瞬捕らわれました。しかし、結果は逆でした。彼が落ちてぼくだけが合格しました。「なんであいつが落ちたのだろう」と不思議でしたが、やがて忘れてしまいました。

 そして翌年、新入生の中にその男を発見しました。駅で会った時、お互いすでに知ってはいたのですが、初めて話しました。とてもいい奴で今でも友達です。彼はとても優秀なのですが極度のあがり症で、本番では頭が真っ白になると話してくれました。それでも彼は勉強を続けて、頭が真っ白になっても答案が書けるくらいに勉強したのだそうです。ぼくの場合は崖っぷちで後がないことが功を奏して、開き直れたのが良かったのだと思います。彼の場合はあがり症を克服するのではなく、どんなにあがっても答案を書けるようにする(というのは、現実は無理な話なので、そう出来ると思い込む)ことで開き直れたのだと思います。人にはいろんなタイプがありますが、要は本番で力を発揮するには自分なりに開きなおることなのではないでしょうか。

顧問医師:中川 晶
平成29年9月

中川晶先生プロフィール

中川晶先生プロフィール

 産経新聞の『中川晶の"生き方セラピー"』でご存知の方もおられると思います。
10年来お付き合いいただいている私共が言うのもなんですが、それはもう愉快な方で、一度語り始めると尽きることがないかのように実に幅広い、しかも有益で面白い話題が湧き出てくるのです。これはおそらく、一度や二度ではない挫折体験と、森羅万象に対する、特に人間に対するとてつもない興味がなせる技だと思えます。受験生についてもご自身の実体験と、臨床心理士としての深い洞察から、真の受験生の心の友となっていただけること請け合いです。先生のユニークで的を得たお話しを、お楽しみください。

  • 奈良学園大学保健医療学部教授
  • 大阪大学医学部講師
  • 心療内科医・臨床心理士
  • 京都大学講師
  • なかがわ中之島クリニック院長
  • 大阪医歯学院顧問医師
<著書・共著>
「心療内科のメルヘン・セラピー」(講談社)
「やすらぎが見つかる心理学」(PHP)
「心理療法」(朱鷺書房)
「ココロの健康からだの医学」(フォーラムA)父(故人)中川米造先生との共著 他

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